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質の高さ [日記]

毎年の卒園アンケートで「もっとHPを更新して欲しい」とか「ブログがほっこりする」とか「うちの子の写真があって、遠くの爺ちゃんばーちゃんに見てもらった」とか。そう言うことなので、ネタがある時の連続投稿です、どーも。

「質の高い保育」って聞いとことある方もいらっしゃるかもしれません。今の世の中は待機児童対策と銘打っていますので、質より量。「とりあえず供給するのだ!」という風潮。そして最近出てくるのが「預かってもらえればいいのか?保育の質はどうなってるんだ。」という問題。受け皿はあるが、預かっているだけ。保育を「やっている風」。この辺がわかっていないと、3歳児から5歳児のいわゆる「幼児期の教育の大切さ」を見失いがちになると思います。今日はそんな話。

初夏のこの時期、自然に囲まれた幼稚園には「虫」がでてきました。トンボもちょくちょく見かけますし、この前はシャクトリムシもいました。蝶々はもちろんのこと、てんとう虫を捕まえたお友達までいます。でもそれらを子どもがゲットするには至難の技。本当に「運」が良くなければゲットできません。しかしダンゴムシやアリは別。子ども達はそんなゲットしやすい虫が大好きで、先に書いたようにバケツにたくさん捕獲して、タカシ先生をびっくりさせるのであります。

この時期、茶色くてとても小さなアリが黒い線になって大行列をなしていることがあります。本当に黒い線のようにずーっと続いているので、時折「紐が落ちている」と思ったり、「一体どこまでるながっているのだろう。。。」と、大人の私も後を追ったことがあるほどの大行列です。そんなアリの大行列がこの時期幼稚園に発生するのですが、昨日は園庭に行列をなしていました。

子ども達がこのアリの大行列に引き込まれない訳がありません。いち早く幼稚園に登園し、アリの行列を見つけたお友達は「どっからきてんだ?」なんつって、行列を追っていきます。そんな姿のお友達をみて後から登園してきたお友達もカバンを背負ったまま「どれどれ!どこだどこだ?!」と地面と睨めっこをしてアリの行列を追いかけてみたり、アリを観察したり。時には、巨人になってアリの行列を邪魔してみたりしているのです。

時は朝の登園時間です。朝のお仕事を済ませたお友達ならいざ知らず、朝のお仕事もせず、教室へも入らず、それに夢中になっているお友達。親や他の幼稚園の先生なら「ほら!朝のお仕事を済ませてから!」なんつって教室へ促すところですが、中村幼稚園の教員の質の高さはこんなところへ現れます。

「いつもなら登園し部屋に入ってくる時間なのにお友達が来ない」と察した担任。教室から顔をだし、園庭を見渡すとそこにはカバンを背負ったままアリを追いかけているお友達数人。登園してきているというその姿を確認すると担任は黙って顔を引っ込め、お友達を好きにさせておくのです。

今夢中になっているそれは、子どもの心を大いに刺激しているに違いありません。そこが見える教員は、「今すべきこと」がきちんとわかっているのです。子どもだって、本当は朝のお仕事をしなければならないと言うことは頭の隅に入っているはず。でも、今日はこのアリの行列が気になるのです。この時期にしか味わえないこの感覚を大切にしてあげたいと思っている教員は、そこを存分に味合わせてあげられるのです。

ほどなくして、アリの大行列は小さな巨人数名に蹴散らされ、黒い行列はなくなってしまいました。すると、カバンを背負ったままのお友達は、誰に言われるでもなく教室へ入り、朝のお仕事を済ませるのです。そのやり切った感は、本当に「今」でしか味わえません。

さて、そんな事を経験した昨日。今日登園してきたお友達は、どうしたと思います?そう、昨日のアリの行列が今日もいないか。カバンを背負ったまま昨日の位置にしゃがみ込み、「今日はいねーなー」なんて言っているのです。そして、アリの行列がないもんだから、すんなりと教室に入り朝のお仕事に取り組むのです。

「幼稚園での遊びがつながる」「子ども自身が変化に気づく」こういうことが意識的に幼稚園で経験させられることが質の高い保育。と言うことなのですよ。中村幼稚園の遊びって「ただ遊ばせてる」訳じゃないんですよ。

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カバン背負ったままアリの観察